[最終更新日]2018/03/22
「民泊用の消防設備の見積りを取ったら結構高い!」と思われた人も多いのではないでしょうか。
消防設備の見積は、一般的に平面図だけを見て出す「概算見積」と現地調査と消防署での打ち合わせ後に出す「正式見積」の2種類があります。
概算の見積りに対して、正式見積が安くなることはよくあります。
なぜ、概算見積りが高くなることが多いのかを、わかりやすくご説明したいと思います。
※あくまで一例で、全ての消防設備会社がこの記事の通りとは限りませんので、ご注意下さい。
平面図での見積もりの出し方
「民泊を始めるための消防設備の見積りをいくつかの会社にお願いしているので、とりあえず概算だけでも見積りを出して下さい」というご依頼を頂くことが多くあります。
当センターの提携会社様では、平面図をいただいて概算見積を作成します。
平面図では、「有線設備か無線設備か」「自動火災報知機の設置数」「誘導灯の設置場所」「階段通路誘導灯の設置場所」等は推定できますので、これを基に見積りを作成します。
平面図ではわからないポイント
平面図だけでは正確な見積りを出せない場合があります。
なぜ平面図だけでは正確な見積が出せないのでしょうか。
収納部分の広さと用途
簡易的な平面図の場合、実測での収納部分の広さがわからない事が多くあります。
民泊は防火対象物といって、1㎡以上の収納には自動火災報知機の設置が必要になります。
無線の自動火災報知機が認められる特定小規模施設(木造平屋建てや2階建てなど)の場合は、2㎡以上の収納に自動火災報知機の設置が必要になります。
さらに、収納するものが布団の場合、熱感知器といって煙探知機よりも安価な感知器の設置が認められる場合があります。
クローゼットのような使い方の場合は、煙探知機の設置が必要になります。
収納部分に自動火災報知機の設置が必要な場合、自動火災報知機本体の価格と(有線設備の場合は)線をひく電気工事代がかかることになります。
誘導灯の設置
誘導灯の設置条件は決まっているのですが、部屋や階段の構造によっては畜光誘導標識といって、簡易的なプレートを貼ることで認められる場合があります。
これは実際に消防署窓口担当者と打ち合わせをして、畜光誘導標識で代替できるかの判断と了解をもらわなければいけません。
ですから、事前に私どもで畜光誘導標識で代替ができるかは判断が出来ません。
概算見積りが高くなる理由
概算の見積りを見て工事を依頼した後に「やっぱりこの設備が必要になったので、実際の価格はあがります」と言われたらどう思われますか。
見積価格よりも実際の価格が高くなってしまうと、概算見積りで予算を組んでいた依頼者の方に大きな迷惑がかかってしまいます。
ですから、収納の広さが判らない場合は、収納部分が1㎡以上を前提に煙感知器の設置と電気工事の見積り価格を出す場合があります。
同じように誘導灯に関しても、誘導標識は使わず、全て誘導灯で設置した場合を前提にして、誘導灯本体と電気工事の見積り価格を出す場合があります。
このように、安全を見て実際の工事料金が出来るだけ概算見積り以上にならないように計算をすることが多くあります。
概算見積よりも実際の金額が高くなる場合
先ほどのような理由から概算見積よりも実際の費用が高くなるというケースは少ないのですが、まれに概算見積よりも高くなる場合もあります。
どのような場合に概算見積よりも高くなる場合があるのかを見てみましょう。
梁などの構造
感知器には「感知面積」といって、1つの感知器が有効に感知できる面積が決められています。
例えば、40㎡の感知面積の感知器があったとします。
通常であれば30㎡の部屋であれば、この感知器1つで済むのですが、梁などがあった場合は追加が必要になる場合があります。
感知器には「感知面積」とは別に、「感知区域」といって、1つの感知器が有効に感知できる区域が決められています。
例えば、60cm以上の梁がある場合は、感知器を1つ追加しなければいけないようなケースもあります。
こういった構造は平面図では判断できませんので、感知器1つと想定して計算した見積よりも実際の費用が高くなる場合があります。
空きブレーカーの有無
消防設備の一つに「階段通路誘導灯」という、常時点灯させておく誘導灯があります。
階段通路誘導灯自身にもバッテリーが内臓されているのですが、階段通路誘導灯は専用の回路をつなげなければいけません。
分電盤には建物全体の大きなブレーカーとエアコンなど個別の小さなブレーカーの2種類がついていますよね。
この個別の小さな回路の一つを階段通路誘導灯専用の回路にしなければいけません。
この空きブレーカーが無い場合、分電盤を付け替えなければいけなくなる可能性があります。
消防署からの指摘事項
概算見積に含まれていないもので、消防署からの指導で設置しなければいけないというケースも稀にあります。
例えば、お客様から「すでに備え付けていた消火器があるので新しく設置が不要です」と言われてお見積から消火器の費用を外したところ、消防検査で「使用期限が過ぎているので新しい消火器を設置して下さい」と指摘されるようなケースです。
その他、検査をすることで発見された不備などがあった場合は指摘を受ける場合もあります。
正確な見積金額はいつ出せるの?
それでは、正確な見積り金額はいつの時点で出せるのでしょうか。
それは、現地確認をした後に消防署と打ち合わせをして、設置する消防設備が確定した時点になります。
先ほど収納部分で「布団を入れる場合は熱感知器で認められる場合がある」とご説明しましたが、消防署によっては認められない場合があります。
その場合は煙探知機を設置します。
また、誘導灯も畜光誘導標識で認められるかどうかは消防署との打ち合わせによって決まります。
このように、最終的にどこに何を設置すれば許可がおりるかが確定した時点で正式な見積りを出すことが出来るようになります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
このように消防設備の見積りをするためにはいろいろな要素があります。
(あくまで当センターの提携会社様の一例ですので、これ以外にもいろいろな要素はあると思います。)
会社によって見積り金額に差が出るというは、こういった消防署と確認するまで確定出来ない部分がある点も理由の一つではないかと思います。
概算見積りで高くても、実際には安くなるというケースもありますので、どのような条件で出された見積りなのかを確認されることをお勧めします。